| 美人とダイヤモンドの国、インド |
三菱商事ニューデリー駐在事務所長
吉野 宏
インドには沢山の楽しみがあります。決して嫌なことばかりではありません。ヒマラヤの大自然と花鳥風月、5千年の歴史、マハラジャと宮殿、神話や聖地、歌集サンガム(紀元前2世紀から紀元2世紀、400年間のタミル語の歌2500首集めた言わばインドの万葉集)、個人の前世、現世、及び未世を教えてくれるアガステイアやバテイスタの予言や各種の占い、各地のお祭り、ヨガ、ハーブ・アユルベーダ・スパー、香水や香木などの嗜好品、各種の香辛料、インド料理(特にベジタリアン料理)、紅茶、インドファッション、インド絵画(代表的な画家としてRaja Ravi Varma)、手編み物やインド更紗(茜色の染織物)、カタックダンスを始めとする民族舞踊、仏像や仏跡、そして数々の世界遺産、その他数え上げたらきりがありません。私はそれらを訪ねて旅を続けておりますが、意外と知られていないのがインド美人と宝石です。
インドは美人の国です。昨年はMiss Worldでベスト5が最高でありましたが、1994年以来ミスユニバースとミスワールドの栄冠は6回もインド美人の頭上に輝いています。これほどの国は他に例がありません。当世を代表するインド美人は?と聞かれれば、それはアイシュワリア・ライ嬢で衆目が一致します。1994年のミスワールドで現在30歳の独身。毎日、新聞や雑誌、テレビで彼女の姿を見ない日はないくらいです。又、インド美人は海外でもその威力を発揮しております。今年1月15日カナダの首相がインドを訪問した際、首相に同行した下院議員Ruby Dhalla女史(30歳)がその一人。彼女はシーク教徒で本業はお医者さん。2004年6月に初当選しました。長い黒髪が印象的なインド美人だと思います。
さて、インドの美人を見るには、世界のミスコンに参加するインド代表を決める決勝戦が毎年3月末に開催されその模様がテレビで実況生放送されますので、それを楽しむのが一番の近道です。いまどきミスコンなんてとお思いでしょうが、百聞は一見にしかずです。 インド各地の予選会を勝ち上がったファイナリスト(昨年は29人)の熱い戦いは大変見ごたえがあり、インドファッションも同時に楽しめます。2004年大会は3月27日に開催されましたが、その後日談でインド中が一時騒然となってしまいました。この大会の詳細は次のサイト[http://photogallery.indiatimes.com/articlelist/531568.cms]をご覧下さい。
3人が栄冠に輝きました。28日と29日両日の朝刊一面トップで彼女達の喜びが大きく写真付きで報道されました。3人は一夜にしてシンデレラとなったのです。しかし30日の事です。その内の一人、Ms Lakshmi Pandit、Miss Earthインド代表は結婚しているのではないか?と嫌疑が懸けられ、蜂の巣をひっくり返した騒動が始まったのです。連日1面でその経過が詳しく報道されました。
●彼女のムンバイにある家の賃貸契約は、彼女の夫の名前でなされており、契約には同居人として彼女の名前が出て居ることが発覚したのです。夫の名前は、Mr.SIDDHARTH MISHRA、彼女の名前は、LAXMI SIDDHARTH PANDITとして契約に書いてある。カップルで挨拶されたとの証言もある。従いミスなんてとんでもない、ミセスであると言うのです。
これに対し、彼女は「自分はMISSであり結婚なんてしてない。」と反論しました。彼女の住居の取得の仕方が疑惑を招いているのですが、インドにはこんな事情があることを理解しておかねばなりません。インドでは女性が住居を取得するのにSECURITYとPRIVACYの観点から、独身女性が結婚していると偽ることは普通の事で多くの実例があります。又、この国では婚姻届制度はありますが届出は義務ではないので、届けを出していない夫婦の方が一般的なお国柄であることを理解していないとこの騒動の本質がわかりません。日本みたいに簡単な話ではないのです。彼女は裁判所より"UNMARRIED" なる証明書を取得して、自ら公にMISSであることを証明しました。でも、婚姻届を出していなければ当然取得できる証明書なので、これでは皆納得はしませんでした。今住んでいる住居を取得するのに結婚している旨正しくない契約を締結したのは事実。さもなくば住居は取得できなかったであろう事情も社会通念上理解されます。しかし、世界的にこんなインド事情をすんなりと理解して貰えるか?疑問です。
正しくないステートメントをしたのは事実なので、世界大会でインドを代表することはもはや望まないと彼女は栄冠を辞退しました。何故なら、かかる世界大会はイメージを重要視するので、出場してもこの一件で失格にはならないだろうが、さりとてこのことでインドが栄冠に輝くチャンスに影響が無いわけではないと考えたからだと言います。さて、さて、話はこれで終わらなかったのです。何故なら彼女のお相手がその時にミスター・インドコンテストに参加していたからです。今度は、悲劇のヒロインに貶めた憎き男性に白羽の矢が当てられました。さて、その結末はその後どうなったんでしょうか?
インド美人を間近に実感したことがないとよく聞きます。そう言う方には、是非結婚式、或いはお祭りに行って頂きたいと思います。私はグジャラート州のナブラトリと言うお祭りが大好きです。これは州を上げて9日間毎晩踊り狂うお祭りで、例年9月末か10月に開催されます。熱気とスケールから言えば、巨大なディスコダンスと言った趣です。2003年10月1日久しぶりにバローダ市でこの祭典を観客として楽しみました。私は1988年のこの大会を家族4人で楽しんだことがあります。当時小学生であった娘2人にパンジャビを着せて連れて行きました。
さて、久しぶりのお祭りに最高カーストの人達が集まる一番大きな会場を選んで行きました。予約が要ります。当日、当局の発表で1晩で入れ代わり立ち代りで10万人が踊ったと新聞報道されました。とにかく、インド女性(或いは男性)の熱気と着飾った衣装と化粧にただただ唖然とするばかり。一年に一度の大きなお祭りなので、参加者は思い思いの衣装を9着揃えて、毎晩違う衣装でダンスを踊ります。家族、恋人同士あり、団体ありと参加形態はいろいろ。当日の会場では、5万人が反時計回りしながら、ガルバダンスに熱狂していました。人のうねりが時に押し寄せ時に遠ざかる。時に女性が纏まって押し寄せて来る。見ていてとてもエクサイティングです。色とりどりの衣装と宝石が印象的です。ネックレス、ブレスレット、そしてイヤリングに注目です。
宝石と言えばダイヤモンド。インドは南アフリカでダイヤモンドが発見される1896年迄は、世界で唯一のダイヤモンドの供給ソースでありました。現在は産地ではありませんが、カットと研磨では世界で一番大きな市場に発展しています。カットと研磨は何と約58面体まで可能です。数量(カラット)で言って世界の92%のダイヤモンドはインドの町スーラットでカットされ磨かれています。このスーラットの街は同じくグジャラート州にあります。バローダの街からボンベイに向かって車で4時間くらいの所。2003年度において金額で言うと約86億ドルものダイヤモンドがインドから輸出(原石は輸入)されました。
この様にインドはダイヤモンドの国でもあります。「STAR OF INDIA」と言う名前の有名な宝石がありますが、これはニューヨークの自然史博物館に永久保存されているスリランカ原産のブルー・スターサファイヤでダイヤではありません。インドで有名なダイヤは、世界で最も有名なダイヤモンド、"KING OF DIAMOND" であり、「コヒヌール(Kohinoor)」と言います。インドでは看板などでよく見かける言葉ですが、ペルシャ語で「光の山」と言う意味があります。現在、エリザベス皇太后の王冠の飾りとして、ロンドン塔博物館に収蔵されています。1852年東インド会社創立250周年記念にビクトリア女王にインドより贈られました。1858年王冠に収められ、以後歴代のイギリスの王妃の冠に据え付けられて来ています。インドは英国にこのダイヤの返還を求めており、印英間の外交問題の一つとなっています。このダイヤは英国のインド植民地統治時代、インドが搾取された象徴なのです。さて、もう一つ有名なインド産ダイヤがあります。それはフランスに渡ってしまい数奇な運命を辿る「ブルー・ダイヤモンド」です。ブルボン王朝の歴代の王妃が身につけ、最後の王妃となったマリーアントワネットがこよなく愛したダイヤです。因みにマリーアントワネット王妃は、このブルー・ダイヤとインド産シャトーシュ・ショールを愛したインドファンでもありました。このダイヤを持つと呪われて皆死んでしまったというダイヤなので、今では怖くて誰も持つものがなく米国の博物館入りしています。全く恐ろしい宝石です。私は、インドに来てこんな色つきのダイヤがあることを知りました。青の他に、ピンクや赤、黄色にオレンジ、緑や黒のダイヤもこの世の中にあります。それ以来、宝石に興味を持つ様になりました。
昨年、宝石の島スリランカに旅してピンクサファイヤを見つけて感激しました。その昔、ソロモン王はシバの女王に求愛する為にスリランカに宝石を求める使いを派遣したそうです。昨年10月、パキスタンのペシャワル博物館やタキシラ遺跡にガンダーラ仏を求めて旅に出ました。古代遺跡から宝石が発掘されて展示されていました。ネックレスやブレスレットを見学しました。人間は太古の昔から宝石を愛して来たことがわかります。宝石に纏わる話は尽きません。
2005年度のミス日本は久米里紗さん[20歳、身長165センチ、体重48.5キロ、肢体はB82、W57.8、H86.5]に決まったと王冠を頂いた彼女の立派なお姿が先月1月に報道されました。美人とダイヤモンドの国、インドの代表は3月に決まります。3月は北インドは春爛漫。花々が咲き乱れます。そしてインド美人も咲き誇ります。インド美人と結婚された日本人男性と今年は一緒に、2005年ミスインディア決勝戦を観戦するのが楽しみとなって来た今日この頃です。
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