デング熱とチカングニヤ熱
2007年10月
在インド日本国大使館医務官 藤嶋浩司
 初めまして。8月にフィリピンのマニラから赴任して参りました大使館医務官の藤嶋と申します。よろしくお願いいたします。今回はデング熱とチカングニヤ熱という、熱帯・亜熱帯に特有の病気についてご説明します。

1.デング熱(Dengue Fever)とチクングニヤ熱(ChikungunyaFever)

 デング熱はネッタイシマカやヒトスジシマカという蚊によって媒介されたデングウイルスに感染して発病する、痛みを伴う高熱を主症状とした病気です。痛みとは頭痛、目の奥の痛み、関節痛、筋肉痛などのことで、数日から1週間くらい高熱が続いた後に解熱し始めますが、その際に発疹が出ることがよくあります。

 チカングニヤ熱はあまり聞いたことのない病気かもしれません。恥ずかしながら私も少し前まで知りませんでした。私がこの病気を知ったのは、2005年のレ・ユニオン島などインド洋の島々での大流行の時です。チカングニヤ熱もチカングニヤウイルスというウイルスによる病気で、ネッタイシマカやヒトスジシマカなどが媒介し、高熱と関節痛・頭痛などの痛みを特徴とし、しばしば発疹を伴います...あれれ、なんだか同じことを書いているような気がしてきました。そう、これら二つの病気はとてもよく似た病気なのです。デング熱とチカングニヤ熱の特徴を表にまとめてみます。

表1.デング熱とチクングニヤ熱の比較
デング熱 チカングニヤ熱
原因ウイルス デングウイルス(1~4型) チカングニヤウイルス
媒介蚊 ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ他
潜伏期間 3~7日 1~12日(通常2~3日)
主な症状 発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹等 発熱、関節痛、頭痛、発疹等
治療 特効薬なし、解熱剤はparacetamol(Crocin等)を使用する 特効薬なし、解熱剤はparacetamol(Crocin等)を使用する
出血熱 時にあり なし
予後 出血熱では死亡することもある 通常致死的ではない
ワクチン ない ない

 こうして比べてみると、よく似た病気であることがわかります。デング熱は目の奥の痛みといった頭痛を伴うことが多いのに対し、チカングニヤ熱は強い関節痛を特徴とします。しかしこれらの症状はどちらの病気でも見られるもので、それで区別することはできません。最終的には血液検査で診断することになります(デング熱の検査は多くの医療機関でできますが、チカングニヤ熱は限られた施設でしか検査できません)。

 続いて予防などで重要なことについて述べます。

2.蚊対策

 どちらの病気も主な媒介蚊はネッタイシマカ(Aedesaegypti)で、ヒトスジシマカ(Aedesalbopictus)も媒介します(チカングニヤウイルスは、他の蚊も媒介することがあると考えられています。)

 これらの蚊は日本ではヤブカと呼ばれる蚊で、黒っぽく体に縞模様があります(英語ではTiger mosquitoと呼ばれます)。

 蚊の生態と対策をまとめます。どちらの病気もワクチンがないため、予防は蚊に対する対策のみです。

表2.ネッタイシマカの生態と対策
生態 対策
繁殖場所と飛行距離 空き缶・古タ゗ヤなどにたまったわずかな水で繁殖し、飛行距離は短い(人の近くで待ち伏せ) 家の周りに繁殖場所を作らない、家屋内に潜んでいる蚊に注意
繁殖期間 約2週間(10~20日) 池や植木鉢の水受けなどは、1週間に1回は水を換える(捨てる)
活動時間 日中、特に明け方と日没前 活動時間帯には蚊取り線香や虫除け剤を使用する

3.デング出血熱(DHF:Dengue Hemorrhagic Fever)とデングショック症候群(DSS:Dengue Shock Syndrome)

 デング熱の重症型としてDHFとDSSがあります。デング熱では出血を止めたり毛細血管を強化する働きのある血小板が減少しますが、それに伴い出血症状が出るとDHF、さらに血管から水分が漏れ出て急激に血圧が低下するとDSSといいます。どちらも熱が下がり始める発病5~7日目ころに始まり、時に命に関わることがあります。デング熱と診断され血小板が7~5万/mm3以下になったり、鼻血などの出血症状がでたり、血圧が下がり急に倦怠感が強くなったりしたら入院して治療を受ける必要があります。

4.参考Webサイト

 今回は病気についてあまり詳しくかけませんでしたので、次のサイトを参考にしてください。
 感染症情報センター「感染症の話」
  ・デング熱:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k04/k04_50/k04_50.html
  ・チカングニヤ熱:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k07/k07_19/k07_19.html

<一口メモ>
 インドで風邪症状を伴わない急な高熱が出た場合、次の病気を疑います。
 デング熱・腸チフス(パラチフスを含む)・マラリア・チカングニヤ熱
 いずれの病気も自己判断での対処は危険ですので、必ず医療機関を受診し血液検査等を受けてください。

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